最近読んで面白かった小説列挙コーナー

 実生活で特筆する出来事が何もないので最近読んで面白かった(R-18でない)小説を列挙します。(僕個人が比較的最近に読んだ小説のタイトルを列挙するコーナーであり、最近出版された本の紹介コーナーではない)

 

 その可能性はすでに考えた

その可能性はすでに考えた (講談社文庫)

その可能性はすでに考えた (講談社文庫)

  • 作者:井上 真偽
  • 発売日: 2018/02/15
  • メディア: 文庫
 

山村で起きたカルト宗教団体の斬首集団自殺。唯一生き残った少女には、首を斬られた少年が自分を抱えて運ぶ不可解な記憶があった。首無し聖人伝説の如き事件の真相とは? 探偵・上苙丞(うえおろじょう)はその謎が奇蹟であることを証明しようとする。論理(ロジック)の面白さと奇蹟の存在を信じる斬新な探偵にミステリ界激賞の話題作。

 

“奇蹟”を信じる名探偵が、ちょっとでも実現可能性がありそうな現実的解答をすべて先回りして潰すことによって奇蹟の実在を証明しようとするミステリ小説。

 いや~~何食ってればこんな入り組みまくったプロット思い付けるんだろう。謎解きそのものを楽しむというよりは解答と解答のぶつかり合いでぶちアガる推理バトル的な色が強い。屁理屈捏ね繰り回すのは好きな人はこの小説も好きになれる筈。あとなんか助手っぽいポジションで極悪チャイナ巨乳美女が出てくるのがよかった。(極悪チャイナ巨乳美女が嫌いなやつなんているのか?)

うみねこのなく頃に」とか「虚構推理」のメタっぽさが嵌った人には特にお勧め。

 本格ミステリって型が決まり切ってるだけに「型」それ自体をネタにできるのが稀有なジャンルだよね。

 

歌おう、感電するほどの喜びを!

母さんが死んで悲しみにくれるわが家に、ある日「電子おばあさん」がやってきた。ぼくたちとおばあさんが過ごした日々を描いた表題作、ヘミングウェイにオマージュを捧げた「キリマンジャロ・マシーン」など、幻想味溢れる全18篇を収録。『歌おう、感電するほどの喜びを!』『キリマンジャロ・マシーン』合本版

 これ初読だと思ってたんだけど冒頭作の時点で既に既視感があり、三作目で大昔に読んだことあるの完全に思い出した。(脳みその老化~~~~~~~~~~~!!!)

 叙情SFの名手と言われるだけあってエモエモな話が多いのだがエモが続き過ぎるので一気に読もうとすると途中で食傷してしまうかもしれん。寝る前に一日一作くらいのペースで読むのがちょうどいい。

 お気に入りは赤ん坊が出産の瞬間に異次元に移動して青いピラミッドになってしまう「明日の子供」、火星に取り残された男を描く悪夢めいたSF「夜のコレクト・コール」、ピリついた革命前夜の空気を孕みつつもどこか牧歌的な「お邸炎上」辺りだけれど、これから先の人生で一番思い出すであろう作品はチャールズ・ディケンズを自称する男とアメリカの田舎の少年のノスタルジックな交流を描く「ニコラス・ニックルビーの友はわが友」だと思う。これめちゃくちゃ“優しい世界”で、ちょっと無いだろうってくらい優しさがファンタジーなんだけど……でも優しい世界と優しくない世界だったら前者の方が圧倒的に浸っていたいんだよな……そういう意味でもノスタルジーっぽい。これがアメリカの文化人にとっての「古き良きあの頃」なのかな。

ホワイトラビット

ホワイトラビット(新潮文庫)

ホワイトラビット(新潮文庫)

 

兎田孝則は焦っていた。新妻が誘拐され、今にも殺されそうで、だから銃を持った。母子は怯えていた。眼前に銃を突き付けられ、自由を奪われ、さらに家族には秘密があった。連鎖は止まらない。ある男は夜空のオリオン座の神秘を語り、警察は特殊部隊SITを突入させる。軽やかに、鮮やかに。「白兎事件」は加速する。誰も知らない結末に向けて。驚きとスリルに満ちた、伊坂マジックの最先端!

 

 お前ら~~~~~~!最近の伊坂幸太郎もちゃんと読んでるのか~~~~~~!!!?????

 伊坂幸太郎は初期にエンタメ振り過ぎて自称読書玄人に過小評価されてるきらいがあり、それを意識したのか「モダンタイムス」以降エンタメ路線の逆張りをするようになった結果ライトなファンもちょっとずつ離れていったという悲しい過去を持つ作家なんだけど、色々な作風を試して色々なものを掴んだので「残り全部バケーション」くらいからはエンタメ路線と逆張り路線の止揚に到達しているように思う。なので普通に面白い。

 で、近作の中でも特に愉快なのが「ホワイトラビット」で、もはや伊坂幸太郎は映画的な伏線回収だけでなく読み砕いて楽しい文体を操る作家になったのだな~~と実感できる。まあ現代を舞台にあんなキャラが活躍できるってだけでほぼファンタジーなんだけど、でもブラットベリの例の通りに文学はファンタジーなくらいで丁度いいのかもね。優しくて楽しい世界……

 

ユダの窓

ユダの窓 (創元推理文庫)

ユダの窓 (創元推理文庫)

 

一月四日の夕刻、ジェームズ・アンズウェルは結婚の許しを乞うため恋人メアリの父親エイヴォリー・ヒュームを訪ね、書斎に通された。話の途中で気を失ったアンズウェルが目を覚ましたとき、密室内にいたのは胸に矢を突き立てられて事切れたヒュームと自分だけだった――。殺人の被疑者となったアンズウェルは中央刑事裁判所で裁かれることとなり、ヘンリ・メリヴェール卿が弁護に当たる。被告人の立場は圧倒的に不利、十数年ぶりの法廷に立つH・M卿に勝算はあるのか。法廷ものとして謎解きとして、間然するところのない本格ミステリの絶品。

 密室ミステリの大家、ジョン・ディクスン・カーの代表作のひとつ。発表は1938年。

 ……傑作扱いされているけれど、現代の(特に若い)読者には絶対トリック予想できるわけないしほぼバカミスの域では!?????って意図されてない方向で楽しくなっちゃう。いやマジでこれ発表当時でも再現性あったのか……?この時代の〇〇(ネタバレなので伏す、漢字二字)ガバガバ過ぎん……?大トリックはともかく大トリックに至るまでの密室破りの過程は複雑なパズルがパタパタ整理されていく感じで小気味いい。JDカーは日本の新本格ミステリの直系先祖みたいな作風なので今読んでもちゃんと面白かったりするのだ。

 

 まとめ

 小説は面白いけれど1000円超えると買うのはキツく、おれのような貧民のために図書館はあるのだろうがコロナ禍でずっと閉まっていたのでかなり厳しい半年くらいであった。最近やっと入館時間の制限付きで利用できるようになったのは嬉しい。でもどういう根拠で再開してるのかな~~~~とも思う。別に根絶した訳じゃないしなコロナ。まあおれはおれがよければよいからどうでもよいのだけれども。絶対クラスターになりませんように……

 

 

おわり