断酒82日目 両親のセックスが見たい

 極悪大富豪になって多重債務者とかを集めてデスゲームを開催するのが将来の目標のひとつなんですが、あのタイプのキャラクターの本質って「普通だったらやらないことを他人に強要できる」だと思うんですね。

 じゃあ「やらないこと」の究極って何だろうなーって考えるじゃないですか。ベタなところだと「命を賭けさせる」とか?

 でも軍隊の偉い人が死地に兵隊を送り込むのは必ずしも極悪大富豪メンタリティではないだろうし。命を賭けさせるだけでは極悪大富豪には足りない。じゃあ何が必要なのか?「尊厳を奪う」?

 だいぶ近い気がする。さらに厳密にすると「尊厳を失う行動を自分から選ぶように強要する」でしょうね。相手の尊厳を奪う行為として紀元前から常に繰り返されてきた悪行と言えば殺人と強姦ですが、同じ強姦にしても「相手を押さえつけて動けない状態にして犯す」のと「相手を銃とかで脅してまったく望んでいない能動的な性的奉仕を強要する」だったら後者の方が相手の自発性を支配下に置いてる感じでよりワル~じゃないでしょうか。いやどっちも悪いですけれど、でも極悪大富豪はレイプなんかしないからそこは一旦脇に置く。極悪大富豪は乱痴気騒ぎには参加せずワインとか飲みながら愚民を見下ろすものです。自分でセックスするのではなく他人のセックスを笑うのが正しい。つまり「複数の人間を同じ場所に集め、何らかの方法で不本意なセックスを強要し、尊厳の奪われる様を眺める」のが極悪大富豪なんですね。

 

 それを踏まえた上で、この文章を読んでくれている人にも――特にお子さんのいる方に――想像してみて欲しいんですけど、あなたの子供が成長して今のあなたと同じくらいの年齢になるとするじゃないですが。その頃にはあなたもすっかり老人の仲間入りですよね。

 性欲も枯れてパートナーともすっかりご無沙汰……というか性機能はまだ活きてるの?ってな具合です。そんなところに家を出て財を成した子供が戻ってくるわけです。大勢の黒服を引き連れています。何故だか撮影機材も用意されています。

 不安げな顔をするあなたとパートナーの足元にポンと放り投げられたものをよく見ると、それは札束。

 あなたの子供は下卑た笑みを浮かべて言うのです。

「ここでセックスしてよw」

 めっちゃ興奮するか絶対にイヤかのどっちか以外あり得ないじゃないですか。まあ大抵の人はイヤだと思うんです。気の狂った大富豪の前でセックスするのはイヤだし不本意なセックスをするのはイヤだし自分の子供の前でセックスするのもイヤだから気の狂った自分の子供の大富豪の前で不本意なセックスするのド変態じゃなきゃイヤですよね。

 だからこそ、極悪大富豪にとって両親のセックスって世界中の他の誰のセックスよりも価値のあるものなんですよ。何故って最も奪いにくい尊厳ですから。この世で最も強い拒絶を折れば、この世で最も得難い愉悦を得られることでしょう。

 ただの外道ならそこまで追求しなくても適当な加害で適当に欲望を満たしてそれで充分なんでしょうね。けれど“悪の道”を歩んでいくのが極悪大富豪の筈です。求道です。三下でも出来る悪行で満たされるべきではない……求め、極めなくてはいけない。

 畢竟、極悪大富豪の究極は「両親のセックスを見る」です。これ以外はありません。

 それの何が楽しいのかは分かんないですけど頑張って考えたのでたぶん正解だと思います。

 

 

 

 

 

 

おわり