日記:一月四日

 ちんちんをスライスしたら断片がそれぞれ自己再生をし始めた。プラナリアやヒトデは真っ二つに切ると最終的に二体に分裂すると聞くが、僕のちんちんスライスがそれらの生物と違うのは自身を基点にして「僕」という肉体を再生するのではなく各々でまったく違った形状に変化したことであった。

 ひとつめのちんちんスライスは巨大な蛇となった。大きく開いた上顎が雲に届くとき下顎は海溝の底に触れ、頭が大陸の西で這うとき尾は東の果てで揺れる。剥がれた鱗が胴に纏わりつき積み重なって山脈となり、そこに暮らす人々は己が蛇の上に住んでいると生涯気づくことはなかった。
 ふたつめのちんちんスライスは小さな海亀になった。波に濡れ奇妙に照り光るその甲羅には世界に存在するあらゆる色合いが含まれていたが、しかしその美しさは誰にも理解されず、ただひたすらに孤独な生き物であった。
 みっつめのちんちんスライスは無数の蠕虫となって北方の土壌を埋め尽くした。それらはお互いを喰い合って無限に等しい時間を生きたが、ある夜に天から降り注いだ隕石によって身を燃やし死んだ。
 よっつめのちんちんスライスは一本の樹になった。天を覆うほど高く聳え立ち、その枝葉のひとつひとつが空に浮かぶ島だった。地はその根に抱かれて安らぎ、風が吹くたび梢の葉擦れは歌声のように心地よく響いた。
 そして最後のちんちんスライスは、人のかたちを取り、人の言葉を真似、人のように笑って人々の中へと溶け込んでいった。これが今どこで暮らしているのかは、誰も知らない。

 

 

 

 

 

 

 

 

おわり