日記:三月十四日 虚空に向く熱視線

 地下鉄のロングシートに座り、膝上に置いた荷物に肘を乗せ頬杖をついて虚空を眺めながら考え事をしていたのだけれど、その間ずっと目前に男性が立っていたのでこれ傍目には男性の下腹部に熱視線を向けているように見えるんじゃないかと気づいたが、だからって別に困らないか……とも同時に気づいたので、男性の下腹部に熱視線を向け続けた。目的の駅で降り、階段を登って地上へ出る。春めいて来たとは言え日が沈めば風も冷たく、きっとあの男性の下腹部は温かったろうな、と思った。

 

 

 

おわり