日記:三月二十七日 古い冷蔵庫を処分した

 冷蔵庫と言っても抱えて持ち上げられるサイズで、記憶を辿れば上京して初めて買った家電だったような気がする。“気がする”程度のもんだから思い入れは別になく、ある真夏の日に壊れてしまってもあまり悔しくなかったのは安物だったからだ。(入れていた豆腐がダメになってしまった方が悲しかった記憶がある)その後もっとちゃんとした冷蔵庫を買った。もう何年も前の話だ。

 そう。何年も前。これを読んだあなたは「えっ壊れた冷蔵庫を何年もずっと家に置いてたってこと?気狂い?」と困惑しているかもしれない。じっさい気は狂ってはいるのだが、あの冷蔵庫が安物の中の安物、楽天市場で投げ売りされていた凄まじい安物だったのもかなり悪い。というのも区で定められたルールだとインターネットで購入した冷蔵庫は回収業者さんに依頼して処理場まで運んで貰う他に捨てる方法がなく、当然、リサイクル料金に加えて運搬料金もかかってしまうのだ。

 元が安物である。計算すると購入費用より処分費用の方が倍はかかることが分かった。

「なんか……不条理だな!!!」と当時の僕は思った。だって直感に反している!

 いつだって本当に大変でコストがかかるのは“0”から“1”を産み出すことではないのか?“無”から“有”に転化することではないのか?“何もない部屋”から“冷蔵庫のある部屋”になることこそが生活上での、人生という道の上でのほんとうの一大事であるべきじゃないのか!区のやり方じゃあ0をマイナスにすることばかり考えているようなものだ。それはあまりにも後ろ向きじゃないか!あと手続きも面倒臭かった。

 処分しなければ、と思いつつも一旦玄関の近くに置いていたので毎朝家を出るたび目に入り「あるな~」「やだな~」と目をそらし、毎晩家に帰るたびに目に入り「あるな~」「やだな~」と目をそらしていたらいつの間にか七年くらい経っていた。じっさい気は狂っている。

 そんな呪いのアイテムめいた冷蔵庫をどうやって捨てたのか?

 それはめっちゃ気合を入れて手続きしたから。めっちゃ偉い。2025年はめっちゃ頑張る年にしようと思う。このまますべてを捨てて0に近づいていくぞ。

 

 

おわり