てっきり歯茎切って歯を引っこ抜いて縫合して終わりなのかと思ってたら口に突っ込まれた何かから高速で回転する音とモーターの焼けるような臭いがしてこれ工具では?と思う。工具って口に突っ込んでいいの?口に突っ込まれた工具に歯を割り折られるバキバキバキという音が骨に響いて怖すぎて笑ってしまいそうになる。視界はタオル、触覚は麻酔で閉ざされ感じるのはバキバキバキバキバキバキだけ。笑うしかないって状態ほんとうにあるんだ。歯医者さんは開口具でガチガチに固めた僕の口腔を見ながら「そういうことね…」と呟きいや何か疑問があったなら術前に解きほぐしておいてくれと不安になる。レントゲン撮ったろ。普段はお医者さんと歯科助手さん合わせて三人いるのに今日に限って何故か二人体制で回していたので電話が鳴る度に手を止めて助手が受話器を取りに行く。人体ってそんな途切れ途切れに弄っていいものなの?舌をなんかの器具でむりやり押さえつけられたままなので文句も言えない。「これ骨…歯…?」「なんでこんな生え方してんの(笑)」「そんなことある?(笑)」あるんだからその事実を正面から受け止めろよ仕事だろ。歯の生え方が悪いのは誰が悪いんだろう……遺伝子……つまり親?でも今から飛行機で出生地に飛んで親の顔殴って前歯粉々にしてくれば代わりにおれの歯並びが良くなるのかと言えばそんな訳でもなくじゃあ誰にぶつければいいんだこの気持ちは。口に工具を突っ込んでいる人にだけはぶつけるべきじゃないのは確かだ。抜糸して貰いにまた来るんだぞ。あんまり痛くなかったのはよかった。痛み止めとか化膿止めの薬の処方箋を貰いながら「ぜったい飲み忘れるだろうな」と確信しつつ家路についた。全員殺してやる。