僕の出生地の数少ない良いところのひとつは、街の終わりというか岩が転がり落ちてきそうな山肌と磯臭い海岸のあいだに気の抜けた色の道路がどこまでも伸びて行くだけの人間の生活圏の終わり、そこから先に何もない世界の端みたいな場所まで自転車で一時間かからないので「ここが世界の端かぁ~~」とエモい気持ちに気軽になれるところだ。実利は別にないし、それで何か得したこともないのだが、世界の端からずっと進んだ先の短いトンネルの上部は出生地で(僕が知っている限り)唯一ミンミンゼミでもクマゼミでもなくヒグラシが鳴いている林になっていて、街からフラフラ迷い出ていなければあのトンネルをきっと死ぬまで知らなかっただろうから、それはちょっと嬉しいことなのかもしれない。
おわり
おわり