日記:六月二十四日 六月二十四日は全世界的にUFOの日、あるいはアニメ版「イリヤの空、UFOの夏」と向かい合う勇気

「軽飛行機にて飛行中だったケネス・アーノルドは、レイニア山上空で『水面に投げた受け皿のようにスキップしながら飛ぶ正体不明の九つの飛行物体』を目撃した。これが公式に報告された中では最初のUFO目撃事件であり、以降六月二十四日は、全世界的に、UFOの日であるとされているっ」 

 

秋山瑞人イリヤの空、UFOの夏 その1 第三種接近遭遇」より

 

 このブログで話題に出したことはあっただろうか?昔からの知り合いは覚えてくれているかもしれない。僕は秋山瑞人というSFライトノベル作家にいつまでかかずらわっている。

 氏を語るときまず言及するべきはサイバーパンクマジックリアリズムの血を引く麻薬的文体であるとか、作中世界の住人の肌に染みついた感覚や生活を描くことで背景設定・歴史を直接描かずに描く巧みな語り口であるとか、優しい手つきでそっと持ち上げてから叩き落とす心を抉るプロットよりも、寡作であることだろう。

 より正確に言えば寡作というより嘘つきである。なんたって書くと言ったものを書かない。知性を持つ自立全翼機と赤外線ホーミングミサイルとの奇妙な対話を描くSF短編「おれはミサイル」、鯨と自立潜水艦のマカロニウエスタン「海原の用心棒」に、陸上兵器をモチーフとする書下ろし短編を加えた単行本が発売される!と報じられたのが十年以上前で以後の続報はないし、上記で引用したヒット作「イリヤの空、UFOの夏」の作風を受け継ぐ「ミナミノミナミノ」は第一巻だけが出版されて今年で放置二十周年、商業デビュー作にして版権を借りたノベライズ作品である「E.G.コンバット」シリーズは凄いとこでぶった切ったままやはり放置され、つい先月やっと事実上のリタイア宣言が原作の権利者☆よしみる氏越しに世に出回った。二十五年越しのことである。

 

 

 神格化してしまったおれたちも悪いのだと思う。

 秋山瑞人もひとりの人間である。まったくその通りだ。言葉の魔法使いみたいに語るべきではなかった。書くべき本をさっさと書かないオッサンとしてケツを蹴り続けるべきだった。

 タイトルやコンセプトだけ挙げられたものを含めると書かれていない作品の数は十を超える。*1まったく褒められない。商業作家として最低だ。

 しかし言い訳をするならば、繰り返すに言葉の魔法使いが書いたようにしか読めなかったのも事実なのだ。

イリヤの空」第四巻がもう数ページしか残っていないという事実に気づいた瞬間心を締め付けた強烈な望郷感に未だに問われているのは覆しようがないおれという人間の歴史のひとつだ。これはもうどうしようもない。

 

 あんまり評判のよくないアニメ版イリヤの空Blu-rayを持ってるけどそれまで入手困難だった短編が収録されてるブックレットが目当てでアニメそれ自体はまだ観てないって言ったらお前らは笑うだろうか……今こそ観るべきだろうか?

 しっかり信者なので聖典のあんまり評判のよくない映像化に向き合う勇気を持てないまま生きてきた。しかし秋山瑞人に対してある種のフラットさを得た2025年こそ観るべきなのでは?買ったの何年も前だから具体的な金額は覚えてないが覚悟の要る値段だった記憶は残ってるぜBlu-ray!元を取ろうとするべきなのでは……

 おれは……おれは……

 

 

 

おわり

*1:EGF,ミナミノ2,DB3,陸海空三部作の陸,天使戦争(仮),殺人幼稚園児の話,犬がいっぱい出てくる話,便所の話,ゴキブリとネズミの話,ウンコマン,ヒーローもの(仮),その他龍盤七朝作品群