最終話。賛否両論あるべきだろうと思う。
個人的な解釈を並べると(1)のバラエティに裏はない、(2)の「魔法少女おじさん」の時系列も大幅に弄られているなんてことはなく復帰後の魔法少女の中身も素直に山田さん、山田さんの死因は示唆された通り首吊り、動機は教員の頃と似たような行いをしてクビ宣告を受けたからとしておこう。自死を目撃したトラウマで記憶に蓋をした児童が数名いて、それが日下部さんや貝塚さんや漫画版の佐藤くん、三田監督はノンデリだし倫理よりネタを取る奴だがそれだけ。
「ドキュメンタリーの暴力性」みたいな含意くらいはあってもおかしくないが、陰謀の企てはない。隠された恐るべき真相みたいなものはない、と僕は考える。
というのも多くの方々が考察しているような、事実を捻じ曲げる悪辣な編集が加わっていることを示す決定的な証拠は、ついぞ明示されなかったからだ。「こうかもしれないね」「こうだったら怖いね」の域を出ていない。というか時系列編集説がいつの間にか前提みたいになってるのは変だと思う。「もし事実ならとんでもないことですね」つってデマが拡散していく内に「もし事実なら」が消えるTwitterのいつものアレかよ。
いやまあ三田狂人説を唱えたくなるのもわかる。何故ってそっちの方がずっと面白いから。
そもそも考察系ホラー全盛の昨今においては画面に映っているものをそのまま受け取るのがいちばん難しいに決まっているのだし、付け加えれば制作側が枯れ尾花を幽霊に見せようとしていたのは事実であろう。TXQ FICTIONが考察オタクの存在を意識してない訳がない。
それを踏まえたうえで尚、作中で最低限筋の通った答えの提示があり、それを覆すような具体的な情報が存在しない以上、この話はこれで終わりと考えるしかない。
三田監督を信用しろという意味ではない。感想を掘っていくと「作り手の意図で好きなだけ真実を伏せられるのがドキュメンタリー(あるいはモキュメンタリー)なのだから何ひとつ信用できない」と困惑する人が散見される。確かにそれはそうだけど別にドキュメンタリーに関わらず人の手が加わるもの全部がそうだ。裏の裏の裏まで疑い出したらキリがない。後期クイーン問題かよ。今時流行らないよ。物語としては示された以上の裏はないと捉えるのがスマートだろう。
……いやスマートだろうけれど!釈然としない!それも嘘偽りない本当の気持ちだ。では何故「魔法少女山田」はこれ程に釈然としない構成で物語られる必要があったのか。
前回の感想を殆ど繰り返す形になってしまうのだけれど、“怖くない映像でホラー作品をつくるためにはどうすればいいか?”という試みだと僕は解釈した。
「実はお前がいま観てるコレは『魔法少女おじさん第2章』でした!」というメインギミックがあって、でもそれだけだとホラーコンテンツとして弱いので、どうとでも深読みできそうな描写を大量にばら撒き、内なる恐怖心を駆動させ星座を繋ぐように点と点とを結ばせる。そういう作り手と受け手の共犯関係みたいな生暖かさを内側に組み込むことで、熱量を保ったまま幽霊とか化物がやる役割、つまり怖がらせ役を視聴者側にアウトソーシングしようと試みたのではないか。どこまで作り手が意図していたのかは最早分からないが、Twitterで「魔法少女山田」と検索してみよう。ミニマムな都市伝説が大量発生している。実際に作中で提示されたストーリーは既に、怖がるために必要なくなっている。これはホラーコンテンツとしては無敵の状態だろう。
コンテンツそのものよりコンテンツをダシにした与太話でバズろうとする人の方が目立つ現代インターネットにおいて、「じゃあ与太話の発生を演出に組み込んでやろう!」という発想は時代に適合した戦略だし、一方でホラーコンテンツとしてはあまりにもあんまりではある。考察なんて一度火がつけば無限に膨らんでいくんだから、それに比べたらつじつま合わせのオチなんてどうやったって肩透かしだ。だからこそ最小規模の陰謀論が数えきれないほど流布していく。
こうなったのが(つまりこういう作風で行けると判断させたのが)僕みたいな考察/与太話好きなホラーファンの所為であるとするならば、あまり強く文句は言えない。コメント欄を読むのがとても楽しかったのは事実なのだし。
難しい話ではないだろうか。考察勢の存在とかTXQ FICTIONの立ち位置を忘れて一本のモキュメンタリーとして観たとき今作が面白いかって言ったらまた別だ。
そういう意味で、繰り返すに賛否両論あるべきだろう……と思う。
ところで漫画版の連載が始まっている。
おおよその謎に説明がついた今作において、唯一ぽっかり穴が開いているのは「唄うと死ぬ歌」をネットで広めたのは誰なのか、という点だけれど、漫画版はその辺りを補完するのではないか……と予想する。他にやることないし。たぶんやったの松田氏かその周辺の人だと思う。他にキャラいないし。まあこっちでどんでん返しやって何が面白いのかというメタ読みではあるのだが……
いやもちろん実写媒体では不可能なダイナミック大回転が描かれる可能性はあるし、なんだったら「魔法少女おじさん ~第3章~」が前触れなくYouTubeに投下され全伏線が大回収される可能性もある。どっちかと言えばその方がいいよ。その方が面白い。