断酒70日目 おもしろ映画感想回:アナイアレイション-全滅領域- ハイセンスな映像美と極悪なクマ

・今日のおもしろネトフリ映画

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 突如として出現し範囲を広げていく謎の領域「シマー」

 領域外からの調査で分かることは殆どなく、内外での情報のやり取りは不可能でドローン探査も失敗。異変の発端と予想される灯台を目指して「シマー」に足を踏み入れた者のうち、これまでに生還したのは主人公の夫ただ独りのみ。そしても彼も記憶が混濁し危篤状態。

 領域の拡大は止まることを知らず、このままでは地球全土が「シマー」の光に包まれるもそう遠い話ではない。

 そして何度目かの調査隊として、それぞれに過去を抱えた女性達が不気味に輝くベールの向こう側へ進んでいく……という話。

 ぼくはホラー映画のつもりで観たが……

 

 大勢の命を呑み込む「シマー」がホラーモンスターだらけのビックリ空間なのかと思いきや実はそんなことはなく、虹色がかった光が特徴的なこの森はグロテスクに鮮やかで、異常な生態系の混沌を感じさせつつも、何故だか静謐な空気に満ち満ちた穏やかな空間なのだ。

 完全な不条理と言うより人間の埒の外の秩序が通っているような――ある意味で宗教体験的というか、高い次元に在るものを垣間見るというか――そのようなセンスと意図に溢れる映像美が「アナイアレイション」の見どころだろう。

 暗いシーンがあまりないしホラー映画ってよりアート系の向きが強いんだろう。印象深いのは透き通った明るさで克明に描写される異様な森のデティールばかりだ。

 いや“暗くて怖い”場面もあるにはあるんだけど、客を怖がらせるよりは「シマー」という空間のヤバさを示すことが目的って感じ。

 正直に言ってプロットそのものはそれほど新鮮ではないけれど、画面の隅々まで行き渡るすば抜けたセンスと計算に引き込まれたので退屈せずに観れた。

 個人的には灯台に辿り着いてからの悪夢めいたヴィジュアルが特に好き。H・R・ギーガーの文脈を感じつつも、より秩序立って「そういうルールの中で存在しているもの」みたいな説得力がある。繰り返すに独特の“秩序”を感じる映画だった。

 この作品だけでネトフリ料金分の元取った気になれる人もいそうなくらいユニークだと思う。

 

 僕は感覚的なところでかなり好きになったけど、逆に言えば作り手とセンスが合わない人には退屈かもしれない。モンスターぶっ殺していくノリではないので注意。

  気持ち悪いけど美意識を感じるものが好き!というあなたにお勧め。

 あと極悪なクマが出てくる。極悪なクマが好きな人にもお勧め。

 

 

 

 

 

 

おわり