『今この瞬間』を20作品必死に駆け抜けた平成ライダーの積み重ねが爆発事故を起こすバカ映画、劇場版仮面ライダージオウ Over Quartzer
『劇場版 仮面ライダージオウ Over Quartzer/騎士竜戦隊リュウソウジャー THE MOVIE』予告
祝え、王の誕生だ!!
ついにその時がやってきた…!!
「すべてのウォッチを集めたとき、覇道が切り開かれる。」
常盤ソウゴ=仮面ライダージオウ。その存在は最善か最悪か?その時現れたのは、歴史の管理者“クォーツァー”。
王誕生に隠された大いなる陰謀が明らかになり、ソウゴ、ゲイツ、ツクヨミ、ウォズ、すれ違うそれぞれの思惑が、一つの未来を決定する。
世界は崩壊を始めてしまうのか?
“オーマジオウ”とは、そして“仮面ライダージオウ”とは!?
ついに「仮面ライダージオウ」最大の謎が明かされる!!
オフィシャルサイト*1より引用
バカ映画です!
天気の子に客が無限に入ってくのを横目に見ながら観に行った劇場版仮面ライダージオウは、バカ要素も「これもまた平成ライダーというコンテンツの一側面なのだ」としたたかに叩きつけてくる、バカ映画でした!
平成ジェネレーションズFOREVERを指して「きれいな春映画*2」と評する声があったじゃないですか。確かに一理ありますよね。ジオウとビルドの映画というよりはヒーロー大集合映画でしたから。
そして大集合映画であると同時に、虚構としての『平成ライダー』に対する愛に溢れた、幸福な、きれいな映画でありました。そのメタフィクショナルな作風は平成ライダーというシリーズの総括のための必然。クウガもアギトも龍騎もファイズもブレイドも響鬼もカブトも電王もキバもディケイドもダブルもオーズもフォーゼもウィザードも鎧武もドライブもゴーストもエグゼイドもビルドも、もちろんジオウも、例え虚構であったとしてもここにいると高らかに謳い上げ、そしてシリーズを追ってきたファンに感謝を示す、平成ライダー賛歌としか言いようがない一時間四十分。
平ジェネFOより面白い映画はいくらでもあるかもしれませんが、平ジェネFOのような鑑賞体験ができる映画は他にないでしょう。間違いなく傑作です。
じゃあOver Quartzerは?
夏の春映画です!!!!
『今』のノリだけで生きているバカ映画です!!!!!!!ライブ感で映画つくるのをやめろ!!!!!!!!!!!!!!!!!
平ジェネFOが春映画のきれいな部分だけを掬い取った傑作なら、OQはアクも旨味も苦みも甘味もすべてグツグツに煮込んで「これがウチの味だから!!!!!!!!!!残すなよ!!!!!!!!」と有無を言わさず全部丸呑みさせようとしてくる気の狂った一皿。後世『仮面ライダー』の歴史を俯瞰したとき平ジェネFOと合わせて表裏、陰陽、正邪の対象関係として語られることになるでしょう。
FOの次にこれが世に出されるなんていう事故が起きてしまったのだから、あまりの振れ幅の大きさに本来ジオウ本編ごと大爆発していてもおかしくないとぼくは思うんですが、しかしその莫大な運動エネルギーすら飲み込む土壌が『平成ライダー』なんですよね、恐ろしいことに……
間違いなく平成ライダー以外では得られない鑑賞体験を得られ、アプローチは違えど平成ライダーを俯瞰的に語ろうとしている意味でFOに通じる部分のある、記念碑を目指している映画です。そのメタフィクショナルな作風は平成ライダーというシリーズの総括のための必然、クウガもアギトも龍騎もファイズもブレイドも響鬼もカブトも電王もキバもディケイドもダブルもオーズもフォーゼもウィザードも鎧武もドライブもゴーストもエグゼイドもビルドも、もちろんジオウも、凸凹な平成を必死に駆け抜けてきたのだと声を張り上げ、そしてシリーズを追ってきたファンに「これが平成ライダーだ!」と突き付ける、剥き出しの平成ライダーとしか言いようがない六十分…なんですが…いや…
自分からガバガバ方向に舵を切っておいて「瞬間瞬間を必死に生きた結果なのだから嗤うな!」と蹴りをかましてくるのでほぼテロです。いやテロだから何が悪いのかと言われれば口を噤む以外ありませんし、前科一犯二犯どころではないのだからテロも平ラと付き合うには受け入れるべき愛嬌なのかもしれませんが……
でもテロはテロなんですよね……
平ジェネFOとは(あまりにも)違う意味で平ラ賛歌。いくらなんでも初見お断りが過ぎる。文脈を共有していない人間が間違えて鑑賞してしまえば「は?」って言うだろうし、なんだったら平ラファンも「は?」って言う。
上級者向けの、バカ映画です。
以下ネタバレあり
ぼくは世代ではないのでBLACKもRXも履修していないんですよね。だから例の板が出てきたときにも「原典にこういうのがあんのかな?」くらいの温度で流してたんですよ。
絶対シラフで出てくる発想じゃないじゃないですか。麻取は仕事してんのか?
っていうか最大のサプライズ要素が竹内涼真オリキャス出演でもゾンズ勢参戦でもなく仮面ノリダーって確実に白倉Pは混ざりもののない高純度のヤクをキめてると思うんですが、凸凹だらけの平成ライダーの記念作品をプロデュースするにはキめないとやってられないのかもしれない。ある意味では白倉Pも被害者なのでしょう。
そもそもノリダーなんてクウガリアルタイム世代ですら大半は分かんないのでは????? ぼくだってたまたまネットでオタクが話題に挙げてたのを見たことあるから知ってただけでそうじゃなかったら「なんでとんねるず???????」って首傾げてたしそういう事故が日本中の映画館で絶対多発してますよねコレ???? レインボーは空だけじゃなくて脳にもかかるんですね??????
っていうかドライブ編らしいですねOQ。なんか誰もドライブの話してなくないか???????
我の生き様桶狭間しそうにもないし歴史上最も欲深そうでもないアナザー信長にも突っ込みたくなるんだけど、アナザー信長も凸凹の道を必死に駆け抜けてきた結果なんだよ!!!否定するな!!!!!!!!!!平成ライダーキック!!!!!!!
漫画版クウガすら拾っておいてTHE FIRST勢を無視するの謎の姿勢に凸凹を感じざるを得ないんですが、でもザモナスの変身エフェクトで周囲のススキが燃えてたりするんですよね…なんでそんなところだけちゃんとしてるんだよ。
そう言えば書きながら思い出したんだけど本物SOUGOって結局何者だったの?オーマジオウの中身ってどっちなの?
A.凸凹
ものすごい勢いで開き直ってくるのでガバガバに湿っぽさがないのは好き嫌いで言えば好きなんですが、それにしたってさ……もっとこう……あるだろ……
全肯定はできないけど、でも平成最後の劇場版仮面ライダーとして確実に爪痕は残した、そんな夏の春映画。
あまりにも「平成」のリアルタイム性が強いこのプロットは、観るなら今しかないけれど、でも平ラの文脈を共有してないと上述した通り「は?」で、しかも強く自覚的にやっている訳だから……
劇場版仮面ライダージオウ Over Quartzer、ほんとうに、バカ映画です…
これは戦利品です(写真が下手過ぎる)
リュウソウジャーは…よくわかんなかった…
*1:
http://zi-o-ryusoul.com/index.html
*2:ここでは『レッツゴー仮面ライダー』以降毎年春に公開されていたクロスオーバー映画を指す。企画を練る時間的余裕のなさが見え隠れする作風、そして余裕のなさに対して開き直った陽性のガバガバが特徴、きれいではない