『仮面ライダー 令和 ザ・ファースト・ジェネレーション』感想、仮面ライダーの映画っぽい仮面ライダーの映画久しぶりに観た気がする

 クリスマスを前にしてぼっちがどうのモテがどうのとネットで喚くのがユニークだった時代はとっくに終わっていて、では令和のクリスマスに何をすればいいのかというと仮面ライダーの映画を観に行くのが最もクールです。

 という訳でクリスマスイブ、『仮面ライダー 令和 ザ・ファースト・ジェネレーション』を観に行った僕は「ゼロワンって近未来とかじゃなくて2019年の話なんだ!?」と衝撃を受けたのでした。

 以下ネタバレあり。

 

 


『仮面ライダー 令和 ザ・ファースト・ジェネレーション』予告映像

「・・・夢を忘れず、戦え」 或人が目覚めるとそこは、いつもの日常ではなく人工知能搭載ロボ・ヒューマギアに支配された世界だった・・・!社長の座もヒューマギア・ウィルに奪われ、ヒューマギアたちの人間抹殺が激化する最中、現れたのは仮面ライダーの記憶を失くし、学生として過ごしていたはずのソウゴ・ゲイツツクヨミ、そしてそこにはウォズの姿も。 元いた世界を取り戻すべくソウゴたちとともに12年前にタイムトラベルした或人を待ち受けていたのは、仮面ライダー1型なる兵器を開発しヒューマギアを守るために戦う父親ヒューマギア・其雄と、謎のタイムジャッカー・フィーニス。何故、其雄は仮面ライダー1型になったのか。フィーニスの本当の狙いとは一体――。そして世界のゆがみはどうなってしまうのか!? ゼロワン誕生に隠された、親子の“夢”の物語がいま始まる――。 

 

東映オフィシャルサイト*1より引用

 

 

 MOVIE大戦っぽかったですね。令ジェネは平ジェネよりMOVIE大戦に近いのか。

 前作と現行作のクロスオーバーを卒なくこなすという意味で、冬映画冬映画した冬映画でした。もっとはみ出したことをしてくれ……みたいな感想はまったく無くて、何でって前作劇場版があのジオウOQですからね。むしろ落ち着いてくれて嬉しい。

 

 もくじ

 

労奴としてのヒューマギア

 ヒューマギアの反乱を奴隷解放と暗に重ね合わせるプロットは、“仮面ライダーゼロワン”という物語の倫理観というか、「そこを適当にされたら素直に楽しめなくなってしまう」ラインを突いているように思います。ヒューマギアと人間が共に歩む社会は、片方の無償の奉仕が前提になっているものなのでしょうか。

 まあ僕は労働から解放されたいので機械に権利主張されたら凄く嫌だなあという漠然とした気持ちがあるのみですが、でもヒューマギアはやりがいだけ対価に笑ってろ、なんてのもフェアじゃないのは事実ですよね。

 そして、人間とヒューマギアが笑い合える未来を唄う或人は両者に対してフェアであるべきですし、問題が問題として提示されたからには何かしらのアンサーを出すべきです。

 残念ながら本作の中で直接的な答えが提示されることはありませんでしたが、ウィルに静かな怒りをぶつけられたのは飛電是之助先代社長だけで、ウィルの自我の萌芽そのものを直接或人に目撃させない展開は(綱渡りみたいなものではありますが)何とか引っかからずに済むギリギリのバランス感覚だったように思います。

 これは問題そのものを有耶無耶にしたのではなくて、簡単に結論付けられることじゃないからここでいったん布石のひとつとして置いておいて、本編で答えを出すための前振りだと信じておきましょう。『エグゼイド』最終回でデータと生命の境界線に言及した作り手がまた集まってるんだから、あのセンスオブワンダーをもう一度期待しても大丈夫だと思います。

 たぶん。

 

人間にとってのディストピア 

  それにしてもカッケーのが1型と001の二大劇場版限定ライダーで、無骨なデザインもそうですが目まぐるしく動く戦闘シーンが等身大特撮の喜びに溢れ、ひたすらに脳から快感汁が出まくりました。スパイダーバースの時にも思ったけどエフェクトがカッコいいとそれだけで嬉しくなっちゃうんですよね。001の黙示録の蝗害めいた変身エフェクト、厨二マシマシで最高です。

 そしてライダー戦に限らず、全体的にアクションがとんでもなく素晴らしい映画でもありました。

 特にレジスタンスの乱戦が気合入ってましたね。僕はライダーの生身アクションすぐ飽きちゃうほうの特撮オタクなんですけど今作に関しては見せ方がド派手なのでかなり楽しめました。すぐ飽きちゃうほうの僕ですら楽しめたのだし生身アクション全然OKのほうの特撮オタクが観ればより楽しめるんでしょう。発射される銃弾は多ければ多いほどよい。

 全体的に重めのトーンで進む物語は、より現代的にリファインされた『パラダイス・ロスト』のような絶望感があります。しかし『パラロス』と違うのは、絶望的ディストピア*2の中でも“敵”との共存が(非常に困難ではあるが)可能なものとして描かれ続けていることで、だからゼロワンが描きたいのも最終的にはここに回帰するのだと予想します。

 そして父と笑い合うために、平成を超え、ディストピアを超え、新たな時代の1号ライダーとしての矜持と共に高らかに宣言される必殺技の名を『ライジンユートピア』!掲げる願いは自分と父だけでなく、人間と機械が笑い合う理想郷。

 エモーショナルですね。かなりグッと来る。

 このシーンを持ってヒューマギア労奴問題はいったん保留でいいと思う。エモいので。

 

 もちろん造り上げた世界が人間にとってはディストピアだったとしても、ウィルがヒューマギアの自由の為に戦ったのは間違いない訳で、だからウィルだって正真正銘仮面ライダーでした。

 僕はこの映画では、彼がいちばん好きなキャラクターです。

 でもあいつ何で普通にゼロワン以外に負けたんだろ…アナザーライダーとは…?

 

これもまた瞬瞬必生 

 ほんとアナザーライダーって何なんですかね。タイムジャッカーも未だに全然わからん。

 って言うか今作のジオウがTV版最終回の続きと考えたらOQの時系列がいよいよもって意味わからなくなるけど考えてみれば最初からよくわからない映画だったからそこは何の問題もない。

 記憶が戻り出した瞬間『明光院くん』の顔から『戦士ゲイツ』の顔になる押田岳氏の演技にほえーと感心していたんですが最終的に我が魔王がドスが利き過ぎて細かい演技とかよくわかんなくなってしまいました。常盤ソウゴをやれる役者は奥野荘以外に存在しねぇんだろうなとよくわからないなりにわからせられた。

 今作におけるジオウ組は舞台装置に徹したと言うところですが、そりゃまあ普通に敵勢力と正面衝突しちゃったら蹂躙しないと不自然になってしまうので当然ですね。ゼロワン本編の序盤ボス張ってる奴らをほぼ完封したの笑ってしまう。

 

 平ジェネFOのティードも大概よくわかんないやつでしたが今作のフィーニスもまあよくわからず、元々悪の存在であった『仮面ライダー』をお前らが歪めたのだから元に戻すだけという主張は言いたいことは分からないでもないけれどそれ本郷猛に直接言えよ、って感じです。

 そもそもあいつ本郷猛本人を悪落ちさせるとかの大ネタ仕込んでくる訳でもなくただ単にデカいだけのアナザーライダー用意しただけでどうやって時の王者に勝つ気だったのだろうか、無謀過ぎないか…

 でもジオウ要素がいまいち凸凹しているのはフィーニスが瞬間瞬間を必死に生きたからなので笑ってはいけない。笑うと蹴られる。

 

最後の平成ライダーから始まりの令和ライダーへ受け継がれるもの

 押さえつけてきた平成が溢れてきたと話題のジオウvsゼロワンラストバトルですが、カラっとしたタイマンみたいな空気感出してきたから一瞬騙されそうになったんですけどアレつまり殴って記憶飛ばすつもりですよね…? 平成令和のバトンタッチって軸に収まる狂気ではなくない…?

 突然の無体な暴力で何を受け継いだのか…何を受け継げるのか? 少し考えて、ふと気づきました。

 其雄がフォースライザー造る→先代社長が『仮面ライダー』を参照してゼロワン計画始動って順番なら其雄は『ゼロワン計画に関わるヒューマギア』じゃないからバックアップ造れるんじゃないの? とか、

 1型は暴走ヒューマギア元に戻せるっぽいけど何でその機能ゼロワンに引き継げなかったの? とか、

 先代のヒューマギアへの温度ああいう感じだったの…?とか、

 エイムズ組の最後の会話不穏じゃない…?とか、

 イズもう完全にシンギュラってない? とか、

 子供ヒューマギアがいたりヒューマギア学校があるってことはつまり改変後の世界のヒューマギアって成長すんの!? とか、

 アレです。

『意味があるのかないのか回収されるのかされないのか断言出来ないよくわかんないやつ』

 平成ライダーで沢山あったやつです。

 これを受け継いだのだと思う。

『こういうこともしていくからね』っていう確認。

 それがラストタイマン。

 一種の禊

 禊を終えた以上細かいことに文句をつけられなくなる無敵の防御です。

 

 という訳で僕の感想をまとめると『基本的にはまっとうにゼロワンのエピソードゼロなのでゼロワンを追うなら当然観た方がいい正統派冬映画』となります。楽しくてよい映画でした。

 あとレジスタンスにめっちゃおっぱい出してる女の人いたのが嬉しかった。

余談

 物分かりが良い風を装いたいので映画館の上映前の広告がどれほど長くても文句言わずに受け入れようと心掛けているんですが、TOHOシネマズで観せられた日本郵便のCMが滅茶苦茶しゃらくさくて何の捻りもなく普通にイライラしてしまって凄かったです。皆さんも年末、1800円を払い日本郵便の広告で普通にイライラしてみてはいかがでしょうか。年賀状のやつです。観ればわかります。あの年賀状を通したささやかな人々の繋がりを描いたくっだらねぇやつです。俺だけが不愉快になったのが許せない。お前たちも不幸になれ。もしお前があれを良いと思う人間だったら「そっか…」って言う。どうせ年末暇だろ。な?行けよ。

 な?

 あ?

 あ"あ"????

 ヴワ"ッッッッ!!!!!!

 

 

 

 

 

おわり

*1:https://www.toei.co.jp/movie/details/1215164_951.html

*2:ディストピア』は厳密な定義の元運用されてきた言葉じゃねぇんだからフワっと使っても何の問題もねぇだろうが派です