あの猫もう死んでるんだろうな - 6週間以内に獣医の勉強を始めなかったので死ぬ

　誰もがそうであるように若き日の僕にも「学校行きたくない！」という気持ちが爆発した朝があって、馬鹿あるいは煙だったので自転車で行ける範囲で最も高い場所まで登ったもののそこからどう進めばいいのか思いつかず（馬鹿では？）仕方がないから街を見下ろせる公園の屋根付きベンチで時間を潰していたところ雨が降ってきて、これはもう動けないし謎の焦燥感が身体をそわそわさせているし家に帰ったら怒られるのだろうし、つまるところ能力が低いので捻くれ方もド低い少年のどん詰まりがそこだった訳ですが、そんな僕の足元に野良猫が媚びたゴロゴロ声を出しながら近づいてきたんですね。

　雨の中で野良猫に餌をあげるチャンスが巡ってきた、と理解した僕はお弁当箱をひっくり返して、手間をかけているというアリバイ作りのため輪切りにされた魚肉ソーセージや消費ペースを把握せず炊いているので黄色くなっているお米を地面にぶちまけると、すんすんと匂いを嗅いだ猫はすぐに喰いついてきました。

「ああ雨の中で野良猫に餌をあげているなあ」「雨の中で野良猫に餌をあげたことのある側の者になったなあ」「雨の中で野良猫に餌をあげた経験を持っているという自負を胸にこれから生きていくんだろうなあ」と感慨に浸りつつ、せっかくだから「お前も独りなんだな」と誰にでもなく呟いてみたかったんだけど恥ずかしくて無理だった……という記憶が先日の雨でふと蘇ったんですが*1、もう十年以上前のことなのだから平均寿命的に考えてあの猫もう死んでるんだろうな。

　このブログを読んでいる方々にも若き日々にふっと表れた特別な野良猫がいるかもしれません。思い出してみてください。その猫はもう死んでいます。

　猫は昔から好きだったんですけれど、犬となると一桁年齢の頃に脛を噛まれたものだから長いこと苦手にしていました。痛みよりもむしろ、漫画で読んだ“狂犬病”なるやべー病気を発症するんじゃないかという恐怖で涙が出てきた記憶があります。*2

　まあ通学路の途中に寝そべっていたあの大型犬の尻尾を踏んでしまった僕が悪いんですが、今考えてみると犬小屋みたいなものを作らず歩道で放し飼いしてたあの飼い主もまあまあ悪いですね。いや家が狭いのも庭なんかないのも分かるけど。普通に公道だし。室内飼いして欲しい。

　その大型犬は僕の身体が大きくなってからも変わらず同じ場所に寝そべり続けていたので相対的に大型でもなくなって、だから犬って実はそれほど怖くないのでは？　と気づいたきっかけもあいつなんですが寿命を考えるとあの犬もやはりもう死んでいるのでしょう。

　通学路には中型の黒い犬を狭い鉄檻に押し込めている家もありました。その家の長男は下校するとほぼ毎日金属バットで檻を殴りつけていて、犬の悲鳴は比喩でなくマジで町中に響き渡っていたので苦情もついたそうですが彼はバットを振るのを止めませんでした。その黒犬は完全に人間を敵視していたので鉄檻も必須だったのですが、バットが先なのか人間への敵視が先なのか僕は知りません。彼も学校で嫌なことがあったのかもしれませんしあるいは単純にサイコだったのかもしれませんが、いずれにせよ知りようがないので自信を持って言えるのはあの犬はたぶん平均よりもずっと早く死んだんじゃないかなってことくらいです。

　でも百歳超えのご長寿が珍しくない令和の時代ですから、平均寿命で考えれば飼い犬を虐待していた彼はまだ生きているでしょうし、歩道を占拠していた飼い主も生きていたって不思議ではありませんし、僕を学校に行きたくなくさせた人たちもきっと全然生きていることでしょう。

「嫌だなあ」と思うだけで、だからどうしたということではないです。

　死ねばいいのにな。

　人間も十年くらいで死ねばいいと思います。

　いや動物と人間のどっちが好きかって言われれば普通に人間の方が好きなんですが（人間の肉は食べませんが、家畜の肉は葛藤なくおいしく食べます）、でもほら『人里に降りてきた熊をハンターが射殺したら心ある方々から苦情が入った』というニュースをインターネットのもっと心ある方々が嘲笑するいつものやつあるじゃないですか、あれ「そりゃ熊が出てきたら殺さないと殺されるのはそう」とも「まあ殺す以外の方法はないのかと思う気持ちも分かる」とも「隙があったら誰かを馬鹿にして悦に浸りたいよね」ともそれぞれの立場は理解できるので誰を否定することもしないんですけれど、とは言え「人間様の高慢だ大人しく熊に喰われとけよ」とも「安全圏からハンターにケチつけてんじゃねぇよお前も喰われとけ」とも「お前の腐った肉は熊も嫌がるだろうから永遠にニュースに短文でいっちょ噛みしてろ」とも内心では思いますからやっぱり死ねばいいんですよね。あの猫が死んでるんだから人間が生きてていい道理はない。それはそう。

　ところで僕自身は熊のやつにどういっちょ噛みしてたのかTwitter掘り返してみたらこんなこと書いてました。