最近読んで面白かった漫画を淡々と記録するコーナー10月:百合のことなんもわかんない編

 

泣いたって画になるね

 

 百合に詳しいと自負する人間ではないし百合のオタクを怖がっている人間でもあるので何をもって「百合」で何をもって「百合でない」のか明言するのは難しいが少なくとも「泣いたって画になるね」は女の子と女の子の話ではあった。

 

親友なんて大嫌い。モブ女子の独立戦争

幼なじみの親友・リコは最強マブいクラスの頂点。
笑うと当たり前のように風も味方し髪をなびかせ、通り過ぎる人は誰もが振り返る。

幼い頃からずーっと一緒のモブ女子・小枝はある日ついに自覚する。

「ほんとはずっと前から気付いてる。あたしは――コイツが嫌いだ」。


添え物の人生から、自分だけの「特別」へ――

写真部の岡村靖幸好きの男子と意気投合した小枝は、
リコから独立することを誓うが――!?

全女子必読&全男子必修!
サブなカルに生きる小枝のこんがらがった自我の行方は!?

浅野いにおの一番弟子・畳ゆかが贈る、ポップでサイケなガールズバトル・フォー・イグジステンス、もしくはウォー・オブ・インデペンデンス開幕!!

 単巻完結。

 上記はAmazonの商品紹介文をそのまま張り付けたものだが半分くらいはウソで、ポップでサイケな実存確立物語では決してなかったし、親友から“独立”する話でもない。

 形容するなら「痛々しい敗北譚」としか表現しようがなく、人生を横断する強烈な存在に挑まんとした結果、戦いに負けるだけでなく勝負の土俵にすら上がれなくなるキツい話だ。読んでいて口の中に広がる苦々しさは、読者としての僕自身の十代の日々を――青春なんて言い方は出来ないような黒々とした日々を――想起させるえぐい読み味。自意識の空回りだけが存在する黒々とした日々にはただ“自分に輝ける場所はない”という諦観があるのみで、この作品におけるそういった諦観の向く先はすべて“親友”のリコという女に集約されるようになっている。

 この女はあらゆる意味で「理不尽なもの」であり、そして人生を理不尽に振り回される小枝という女は、理不尽を理不尽として受け止め抵抗することでしか「何者か」で居られない。だから原理的に勝てない。

 ひどく邪悪な女女漫画だな~~と思う。読み返すのにも体力が要る。

 

1、2話は↓から読める。

yawaspi.com

 

 ガチ恋粘着獣~ネット配信者の彼女になりたくて~

ルックスの良さで、同級生から一目置かれる女子大生・輝夜雛姫。 そんな彼女には誰にも言えない秘密があった。 それは、とある配信者グループのメンバー・スバルに“ガチ恋”していること…。 本気でスバルと付き合いたいと願う雛姫に、ある日見知らぬアカウントからDMが届き、 雛姫の人生は一変する――。

 

 いま連載されているweb漫画の中ではトップクラスに面白いと個人的に思っている。

ガチ恋して粘着する」という行為に対しての向き合い方や、心の在り方、純度のために何を差し出せるのか?と狂った女が自分自身に問いかけ続けるような……いわば「道」の話だ。更に粘着される側である配信者「スバル」が単なるヤリチンでも純粋な被害者でもないところが「道」に立体感を与えている……世界で唯一の「ガチ恋粘着道」の漫画がここにある。

 そんな漫画だけどTwitterの感想を漁っていると百合的に解釈している人もいる。

 なるほど主人公「ヒナ」と、中盤から登場しヒナと対立するスバルガチ恋勢「りこめろ」の関係性に注目すると、同じものを見て同じものを渇望し同じように狂い、だからこそお互いの熱い感情に共感できる、お互いにとって一種の理解者のような描き方をされている。

 そして、この漫画全体を俯瞰すれば、同じ憧れを抱く二人の女の人生が一瞬だけ交差し、「ガチ恋粘着」という行為に対しての純度の差によってその後の歩みが分かたれる……という構図になっていることがわかる。ヒナが/りこめろが何故、こうなったのか/ああなったのか――が、そのまま全体のテーマになっているのだ。女と女がテーマ性を相互補完するという意味で女女漫画と言えるだろう。

 ヒナの話は終わったけれど、熱狂冷めやらぬうちに新たなガチ恋勢が活躍する第二部が始まって今盛り上がってる漫画でもある。あるんだけど……ただこれ基本アプリで単話売りしてる漫画で、単行本の二巻がなかなか出ないからお勧めし難いんだよな~~~~おれは待ってるからなコアコミックス~~~放り投げないでくれ~~~~~

 

 

1~3話は↓から読める。

comic-zenon.com

 

 

「しにたいおんなのこ」シリーズ

 

しにたいおんなのこ

しにたいおんなのこ

  • 作者:るぅ
  • 発売日: 2020/07/09
  • メディア: Kindle
 
ちょっとしにたいおんなのこ

ちょっとしにたいおんなのこ

  • 作者:るぅ
  • 発売日: 2020/07/31
  • メディア: Kindle
 
したいごっこ

したいごっこ

  • 作者:るぅ
  • 発売日: 2020/08/30
  • メディア: Kindle
 

 

 Twitterで連載されていたポップでゴアなサイレント漫画三部作。

  肉体的に不死身の女の子が死のうとし続ける「しにたいおんなのこ」

 何故死にたいのかが間接的に明らかになる中盤からジャンルごと変化するような劇的で壮大な大回転を見せ、その先に辿り着く言葉など要らない溢れるほどの愛はサイレント漫画の形式でしか表現できないだろう。そして可愛らしい絵柄で描かれた女の子と女の子が若干にエッチなことをする漫画でもある……

 

  巡る因果の物語「ちょっとしにたいおんなのこ」

 前作に比べてごく狭くごく身近な範囲で善意が巡り巡り、しにたいおんなのこの元に戻ってくるので死ねない話。その死ねなさと言ったら殆ど呪いのようでもあるけれど、最終的に善い行いに善い結果が返ってきて幸福に満ち満ちる漫画であり……読んでいて嬉しくなる。前作程エッチではないが、可愛い女の子と女の子がしっかりガールズラブをやる。

 

 そして外伝、「したいごっこ

 毒々しくて騒がしくて、どこか楽し気な擬死と、ただ静かな本物の死の物語。一作目のような盛り上がりだとか二作目のような大団円感はないけれど、それは今作で描かれる「死」が穏やかで平和で、読者にとっても有り触れたものであるからだ。「死」をポップに誇張してきたシリーズの落着点として正しい。三作の中でも特に「ゆめかわいい」的な文脈の影響が強いように見える。気のせい?個人的にはいちばんエッチ!

 

「性的描写があればレズ、レズと百合は別」みたいなこと主張したオタクが別のオタクに囲まれて殴られるやつ最近もやってるんだろうか。

 まあ性的描写の有無によって変わるのはレーティングだけであってジャンルじゃなくね?とは思うけれどキルタイムコミュニケーションとかから出てるゴリゴリにR-18のレズレイプ漫画とかがいわゆる「百合」的な消費をされてるとこはあんまり見たことがなく、たぶん曖昧だったり時に移動したりするだけで境界線はあるのだろう。曖昧なジャンル語るの怖えー。でも少なくとも「しにたいおんなのこ」シリーズは女の子と女の子が幸福になったり思い出に浸ったりする話で、エッチだけど女女の漫画だとは思う。エッチだけど。

 

 購入せずとも↓のモーメントから読める(ぼくはありがとうの気持ちで買った)

 

 

 

 

 

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おわり